羊膜移植による眼球の修復
羊膜を用いた目の治療は、1995年頃に米国から広がった。日本では、
2003年に高度先進医療に認定され、2014年に保険適用されている。
日本角膜学会によると、約60の医療機関で羊膜移植は行われている。
yomidr.yomiuri.co.jp羊膜とは、胎児を包む半透明の薄い膜のことであり、外部の衝撃から
胎児を守り、母体からの拒絶反応も抑える役割があると考えられている。
さらに、傷の治りを早め、炎症を鎮める効果もあるという。
この羊膜を用いた治療の対象となるのは、目の腫瘍や翼状片、角膜表面
のヤケドや損傷などである。腫瘍や翼状片の手術では、羊膜を使うと
傷が残りにくく、炎症も抑えられる。また、結膜を除去した部分に羊膜
を移植すると再発予防にもつながる。ヤケドなどの場合では、治療箇所
に羊膜を被せて、再生を待つ。通常の角膜移植よりも拒絶反応が少ない
点も利点である。
治療に用いられる羊膜は、帝王切開の出産を予定している妊婦から
同意を得て提供してもらう。1回の出産で20~30人分の移植用羊膜が
得られ、2年間の冷凍保存も可能だ。なお、「羊膜バンク」も既に
存在している。また、乾燥羊膜の製品化も進んでいるようだ。
宿主の逃避と寄生者の蔓延
北大がサクラマスとカワシンジュガイを対象に調査した結果、
体力のある感染個体だけが逃避行動をとることを発見した。
また、この行動は寄生者の蔓延を助長することも分かった。
news.mynavi.jp今回の研究では、「体力のある感染個体だけが遠くへ逃げる」という
仮説のもとに検証を行った。加えて、そのような行動が感染者の蔓延
におよぼす影響も検討した。
寄生に対するサクラマス稚魚の反応を調査した結果、大きい魚は遠くへ
逃げ、小さな魚はその場にとどまるという、仮説通りの結果が得られた。
また、数値シミュレーションによって、寄生者軍団は、未寄生の場合と
比較して4倍長い時間にわたって移動し、約6倍広いエリアに侵入・定着
することが分かった。
この結果は、感染個体にとって合理的な行動が、寄生者の蔓延という
不利益をもたらすことを意味する。また、研究グループによれば、
他の生物でも同様の現象が起きる可能性があるため、野生動物での
病気蔓延の予測に応用可能だとのことだ。
絵画に塗り込まれたバッタ
ミズーリ州カンザスシティの美術館は、ビンセント・ファン・ゴッホの
作品を調査中に、絵画にバッタが1匹塗り込まれているのを発見した。
www.cnn.co.jpバッタの死骸が見つかったのは、1889年に描かれた「オリーブの木々」。
ネルソン・アトキンス美術館の絵画修復保存の担当者が発見した。
バッタが紛れ込んだ経緯はわかっていないが、死骸には腹部と胸部がなく、
キャンバス上で動いた形跡もないため、塗り込まれる前に既に死んでいた
可能性があると、古昆虫学の専門家は説明している。
ゴッホは野外での創作を愛したことで知られているため、今回の発見は
それほど意外なものではない。また、ゴッホが1855年に記した手紙には、
「あなたに届く4つのキャンバスには100匹を超えるハエがいるはずだ。」
という文言が含まれていた。
絶滅を左右する隕石落下地点
恐竜の大量絶滅は、小惑星の衝突で撒き散らされた煤などによって、
寒冷化が進んだことが原因だと考えられている。また、小惑星が
落下したユカタン半島は、最悪の事態を引き起こす落下地点であった
とも考えられている。
東北大の研究によると、6600万年前の衝突では、地球全体の平均気温
は8~10℃、陸上の平均気温は10~16℃も下がったと推定されている。
このとき、撒き散らされた煤は約15億トンで、約3億5000万トンは
高層大気中を循環しつづけたと推測されている。これほど大量の煤
を撒き散らせる岩石層は地球表面の13%しかない。ユカタン半島に
小惑星が落下したことは、恐竜にとって不運だったのだ。
また、隕石落下による森林火災だけでは寒冷化を引き起こすために
十分な量の煤は発生しないことや、煤は均等には分布していなかった
ことも、今回の研究では指摘されている。
なお、煤ではなく蒸発した硫黄が寒冷化の原因だとする説も存在する。
この説においては、衝突によって約3250億トン以上の硫黄が放出された
と推測されている。これは、地球を寒冷化させるのに十分な量だ。
国籍選択の届け出数が急増
二重国籍者の「国籍選択」の届け出数は、昨年度から500件以上
増加し、初めて3000件を超えた。増加数は過去5年間で最多。
蓮舫議員の二重国籍問題を機に、法務省がホームページなどを通じて
国籍選択手続きの周知活動を行ったことが、制度の認知につながった
からではないかと推測される。
国籍法では、20歳未満の二重国籍者は22歳までに国籍を選択しなければ
ならないと規定されている。また、20歳以上で二重国籍となった場合は、
国籍取得後2年以内に選択しなければならない。なお、罰則はない。
日本国籍を選ぶには、下記のいずれかの手続きが必要となる。
(2)外国籍の喪失届を出す
法務省によると、2006年度の国籍選択届け出数は1570件だったが、
2016年度はその2倍にあたる3368件。外国籍喪失届も2006年度は
21件だったが、16年度は150件となった。
マダニ感染症に有効な治療薬
マダニによるウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)の
感染者に対して、インフルエンザ治療薬「アビガン」(ファビピラビル)
を投与したところ、一定の効果が得られたことが発表された。
yomidr.yomiuri.co.jpSFTSに感染すると、2週間の潜伏期間を経た後、発熱・頭痛・嘔吐 など
の症状が表れる。重症化すると命にかかわるが、現時点ではワクチンや
有効な治療法は存在しない。国立感染症研究所によると、2013年以降、
315人の患者が報告され、60人が死亡している。
臨床研究においては、10人の患者に対してアビガンを5~14日服用させた
とのことである。結果は、8人の患者には血小板が速やかに増えるなどの
効果が見られたようだ。2人は死亡したが、既に多臓器不全に至っていた
ためであると分析されている。
臨床研究は継続中で、承認のための治験は来年の開始が検討されている。
瑪瑙の石に彫られた細密彫刻
2015年、ギリシャ南西部で発見された青銅器時代の墓から1400点もの
副葬品が出土した。そのなかの一つである瑪瑙の石から、数千年分の
石灰や汚れを落としてみたところ、見事な彫刻作品が現れたとのこと。
なお、この石は「ピュロスの戦い」と名付けられた。
「グリフィンの戦士」の墓が発見された当時、この石は単なる石の玉
という程度にしか考えられていなかったため、回収後はしばらく保管庫
に放置されていた。しかし、管理作業の最中に彫刻らしきものが偶然
見つかったことがきっかけとなり、米シンシナティ大学の研究者による
石の研磨作業が開始され、表面に彫られた作品の存在が明らかになった。
発見された彫刻について、シンシナティ大学のジャック・デービス教授
はプレスリリースで「理解しがたいほど細かい」と述べている。さらに、
あるインタビューでデービス氏は「これほど精緻な芸術作品は、この時代
からさらに1000年経たなければ登場しない」とも付け加えている。
石が出土したグリフィンの戦士の墓は、ペロポネソス半島のピュロスで、
そこはホメロスの「オデュッセイア」にも書かれているネストール王の
宮殿があった場所とされている。そのため、「オデュッセイア」の基と
なった言い伝えの一場面である可能性もある。