タイタンのシアン化ビニル
冬になると、土星の衛星タイタンの極地では、シアン化ビニルと
呼ばれる有毒の分子が激しい雨となって降り注ぐ。
タイタンのリゲイア海の中には、100億トンを超える
シアン化ビニルが含まれていると推測される。
条件が整えば、このシアン化ビニルが集まって、地球上の生命が持つ
細胞膜のような、膜状の構造を形成する可能性があるとのこと。
この「シアン化ビニルが細胞に似た構造を作る可能性がある」という
アイデアは、元々、コーネル大学の研究グループが提唱したものだ。
シミュレーション上では、シアン化ビニルはアゾトソームを作る能力を
持っている可能性があると導き出されたものの、検証するにも地球上では
再現が難しいので、本当に自己組織化できるのかについては、
まだはっきりとわかっていない。
しかし、仮にシアン化ビニルに膜を形成する力があると仮定した場合、
タイタンの湖は、生命が存在するために必要な条件の1つを満たしている
ということになる。
量だけでいえば、リゲイア海には少なくとも360億匹のダイオウイカを
作れるだけのシアン化ビニルが存在するので、タイタンに生命が存在する
可能性も0ではない。