クジラ銀河は化石がいっぱい
東北大と国立天文台は、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラを用いて
「NGC 4631(通称:クジラ銀河)」とその周辺を広域観測した結果、
恒星ストリーム2個と、矮小銀河11個を発見したと発表した。
銀河の歴史を理解する上で、現在有力視されているのは、
「冷たい暗黒物質が宇宙を構成する1つの要因であるならば、宇宙の
構造は小さい構造から大きい構造へと進化してきた」とする仮説だ。
この仮説が正しければ、銀河系やアンドロメダ銀河などの
大きな銀河は、宇宙初期から今日に至るほどの長い年月をかけて、
矮小銀河が多数集まることによって形成されたということになる。
矮小銀河は、その中心となる親銀河と合体するとき、潮汐力によって
形が壊されるが、その過程が恒星ストリームとして確認されることが
ある。矮小銀河の形が壊されていく様は、銀河系やアンドロメダ銀河
などで、恒星ストリームとして実際に確認されている。
観測が行われたクジラ銀河は、すばる望遠鏡で詳細に観測することが
できる銀河のうち、もっとも遠い距離に位置し、アンドロメダ銀河と
似た渦巻き型をしている。しかし、質量はやや小さく、渦巻きの形が
通常の渦巻きよりもふくれあがっていることが分かっている。
また、近くには「NGC 4656(通称:ホッケースティック銀河)」
が存在しており、互いに物理的に影響を与えている可能性なども
考えられていたが、観測の結果、2つの銀河をつなぐような構造は
捉えられなかった。
一方で、クジラ銀河を取り巻く2つの恒星ストリーム(NWとSE)の
存在については確認でき、これらの恒星ストリーム中にある星を
1つずつ分離して観測することに成功したとするほか、2つの
恒星ストリームの起源が同じであること、ならびに起源となる
矮小銀河は太陽の約4億倍の重さであることが判明したようだ。