クマムシのゲノム情報の解析
慶應義塾大学は、クマムシのゲノム情報を解読し、極限環境耐性の
多様性を生み出す機構や、脱皮動物の進化について明らかにしたと
発表した。
クマムシは体長1mm以下の微小動物で、無代謝の「乾眠」と呼ばれる
状態では、超低温や真空への曝露にまで耐えられる極限環境耐性を
持つことで注目されている。乾眠状態のクマムシは、数年もの
長期保存後であっても給水によって生命活動を再開することができる。
今回、同研究グループはドゥジャルダンヤマクマムシと呼ばれる、
比較的弱い極限環境耐性を持つクマムシに着目し、ゲノムを解読した。
同研究グループは以前、強い極限環境耐性を持つヨコヅナクマムシの
ゲノム情報も解読している。
これら2種のクマムシの比較解析から、細胞を乾燥から守るための
多数のクマムシ特有の遺伝子の存在や、抗酸化作用に関連する
遺伝子の重複、細胞ストレスセンサーの欠損など、
乾眠機構を実現すると考えられる遺伝子セットを発見した。
また、詳細な遺伝子発現解析によって、クマムシの乾燥耐性の強弱は、
遺伝子発現の調節によってコントロールされていることもわかった。
クマムシ固有のDNAを保護すると考えられている遺伝子は、
ヒト培養細胞の放射線耐性を向上させることが知られている。