家畜への抗生物質の濫用
食中毒に感染している。食中毒のほとんどは耐性菌が原因であり、
その多くは鶏肉によってもたらされていると警告されている。
地球上で最も抗生物質が使われているのは家畜に対してであり、
米国では年間1万5400トン以上の抗生物質が家畜へ使用されている。
この量は、人間に対する医療行為で使われる量の4倍に値する。
抗生物質は成長促進のために使われ、飼料などに大量に混ぜられている。
その結果、動物の体内で耐性菌が生まれているのである。
家畜への抗生物質の使用は、1948年頃からトーマス・ジュークス
という人物の実験がきっかけで開始され、またたくまに世界中に広まった。
その後、耐性菌による集団感染が問題となったことによって、70年代に
欧州を中心に抗生物質の使用規制が進んだものの、アメリカでは激しい
抵抗があったため、オバマ政権まで問題は棚上げにされた。
ようやく2014年に、ジム・パデュー氏が抗生物質の使用中止を宣言した
ことをきっかけに、アメリカ国内の食品製造・小売・ファストフード企業が
次々に抗生物質の使用を減らしていくと発表したが、鶏肉の細菌汚染は
いまだに高い確率で発生している。そのため、アメリカで耐性菌の問題が
解決されるかは、今後の取り組み次第といえるであろう。
以前から抗生物質の使用を規制してきた国では耐性菌の発生率が
下がっているため、抗生物質の使用が減れば、米国でも感染リスクが
減少することは期待できる。