睡眠という生理現象の役割
熱帯に生息しているサカサクラゲは、夜になると活動が鈍って
眠ったような状態になることを、米カリフォルニア工科大の
研究チームが発見した。
睡眠の役割は、いまだ科学的に明らかにされていない。これまでに
行われた研究では、眠りを奪われた生物の多くが死んでしまうことが
示されているため、脳を休めるために必要であるという説が主流である。
しかし、中枢神経系をもたないクラゲでも睡眠行為が今回確認された
ことで、この通説が覆りそうだ。
研究チームは、6日間、23個体のサカサクラゲの仲間を観察し続けた。
その結果、傘部分を開閉する動作は、昼は20分あたり平均1155回
だったのに対して、夜間は約3割少ない平均781回になっていた。
なお、タンク内にエサを入れると、夜間であってもクラゲが活動的に
なったことから、不活性状態にはあるものの、昏睡状態ではないと
結論づけられている。
次に、クラゲが水槽の上の方から底に戻るまでの時間を測定すると、
昼間の場合はすぐに泳いで底まで戻るものの、夜間に睡眠状態にある
場合は5秒ほどフラフラと漂った後に底に向けて泳ぎ始めたとのことだ。
さらに、刺激を20分に1回クラゲに与えて眠らせないようにすると、
翌日、日中でもすぐ眠った状態になることも確認された。
以上のことは、睡眠が脳とは無関係に太古から受け継がれてきた行動で
あることを意味しており、比較的初期の生物における「体力保存」の
行動がどのようなものであるかを示している。