マイクロ流体チップへの定着
理化学研究所は、細胞や生体分子の機能を損なわずに、
マイクロ流体チップ中にパッケージングする手法を開発した。
マイクロ流体チップを用いると、少量の細胞・試薬での実験や分析時間の
短縮が可能となるため、実験効率化に貢献することが期待されている。
従来は、2枚のガラス板を貼り合わせた後で、微細流路内にタンパク質や
細胞などを注入していた。この処理方法は、流路が閉空間であるため、
細胞や生体分子を流路内の所定の位置へ定着させることが難しく、
実用には壁があった。
その点をふまえて、研究チームは、細胞や生体分子を所定位置にあらかじめ
定着させた後、ガラス板を貼り合わせて、流路を形成する手法を検証した。
その結果、表面が活性化されたガラス板を2枚重ね合わせ、450ニュートンの
力を2時間加えることで、ガラス板の貼り合わせが可能であるとわかった。
また、貼り合わせ時の温度が高くなるにつれて、マイクロ流体チップの
耐圧性能が向上することもわかった。
さらに、マイクロ流体チップの作成後、微細流路に培養液を注入し、
5日間細胞を培養して光学顕微鏡で観察したところ、微細流路内で
細胞が維持されている様子が確認できた。このことは、従来法では
特に難しいとされていた、微細流路内への複数種類の細胞の区画定着が
実現できたということを示している。
このマイクロ流体チップを利用することで、医療分野では患者への
侵襲を最小限に抑えた検査法の開発が可能になるという。