死海文書の断片に偽造品疑惑
ワシントンDCで「聖書博物館」の一般公開が始まった。この博物館は、
5億ドルをかけて建設され、最古の写本群とされる「死海文書」も展示
されている。しかし、来館者が目にする死海文書の断片のいくつかは、
偽造品かもしれないという。
natgeo.nikkeibp.co.jpヨルダン西部クムランの洞窟で発見された死海文書は、旧約聖書の
断片から成り、1800年前のものから2000年以上前のものまである。
10万片に及ぶ死海文書の多くは、イスラエル博物館の「死海写本館」
に収蔵されている。
この文書は、ハリル・イスカンダル・シャヒーンにより、1947年から
1953年にかけては収集家や学術機関に転売されていたが、1970年に
文化財不法輸出入等禁止条約が採択されたことによって、発見された
文書の売却は違法となった。そのため、個人市場で売買されているのは、
1970年の条約発効以前から存在した切れ端に限られている。
2002年頃に、条約が適用されない75の断片が売りに出された。その多くは
ハリルの親族が売り出したものだ。これらの断片の多くは学問的な発見とは
ならないが、死海文書を手に入れる好機であるとして、博物館や収集家たちは
飛びついた。
購入時点では、2002年以降の断片は本物であると広く考えられていたが、
2016年初めにルーヴェン大学のティシュラー氏が、ノルウェーの収集家が
所有する断片のいくつかに疑義を唱えたのを皮切りに、次々に偽造品との
疑いが広まっていった。アグデル大学のユスネス氏によれば、2002年以降
の断片の90%以上は、ほぼ確実に現代の偽造品だという。