サムの備忘録

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白い鼻症候群への対抗策

2006年にニューヨークの洞窟で初めて発見されて以来、大量のコウモリが「白い鼻症候群」で命を落としており、現在までに約570万匹のコウモリが犠牲になっているとされている。

natgeo.nikkeibp.co.jp「白い鼻症候群」の原因は、プセウドギムノアスクス・デストルクタンス(Pseudogymnoascus destructans)というカビであり、冬眠中のコウモリの翼・鼻・耳で増殖することで引き起こされる。P. destructansに感染したコウモリは、冬眠中に頻繁に目覚めてエネルギーを大量に消費し、90%以上が死亡することがわかっている。なお、このカビは北米のコウモリに対しては致死的だが、ユーラシア大陸のコウモリは既に適応している。

 

この問題に関して、 米国政府と学術研究機関は、P. destructansが致死的なカビに変化した原因を探っており、今回の研究では、P. destructansと病原性のない6種の近縁種に、DNA損傷作用のある紫外線を照射して反応を調べたとのことだ。その結果、紫外線がP. destructansを死滅させることが判明した。

 

実験においては、低レベルの紫外線照射に耐えられたP. destructansはわずか15%で、中レベルの照射量では99%が死滅した。一方、それ以外のカビのDNAは紫外線照射に耐えられることがわかった。

 

P. destructansは、気温が4℃~20℃の暗くて涼しい洞窟内で増殖する。上記のような環境に生息する生物は、紫外線によるDNA損傷を修復するための酵素をたいてい持っているが、P. destructansはこの酵素を持っていないのである。

 

ここで問題となるのは、この発見を野生のコウモリの治療にどう生かすかだが、カリフォルニア大学生物学教授のマーム・キルパトリック氏は、冬眠中の数万匹のコウモリに紫外線を照射しても効かないのではないかと述べている。

 

キルパトリック氏の主張によれば、コウモリを1匹ずつ捕まえて紫外線を照射するような小規模な治療では非常に有効であるものの、コロニーに入って紫外線を照射する処置は、コウモリの冬眠を妨害する恐れがあるとのことである。白い鼻症候群によるコウモリ死亡の原因は、不十分な休息による消耗であるため、上記の方法は本末転倒なのだ。

 

その点を踏まえて、キルパトリック氏らは、さまざまな量のP. destructansが冬眠中のコウモリに及ぼす影響を調べている。少量の紫外線でカビを死滅させることができれば、一部のコウモリが冬を越すには十分であるかもしれないとのことだ。

 

また、論文の共著者ダン・リンドナー氏は、米魚類野生生物局のコウモリ未来基金から助成金を受けて、紫外線でカビと闘う研究を続けている。研究では、P. destructansに自然に感染したコウモリを紫外線で治療し、冬眠を生き抜くのに役立つかどうかを検証する。