サムの備忘録

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太陽放射管理と生態系の破壊

太陽放射管理(ソーラージオエンジニアリング)は、地球に降り注ぐ太陽光を科学的に操作するという手法だ。まだ実現してはいないものの、科学者たちは壊滅的な気候変動を阻止する戦略として模索している。しかし、この手法には、生態系に大きな影響を及ぼすリスクが存在する。

wired.jp

太陽放射管理の例

二酸化硫黄が成層圏に散布されると、硫酸塩エアロゾルに変化して日光を反射するため、これを継続すれば地球温暖化を食い止めることが可能である。ちなみに、航空機から散布されて雲のようになった薬品のことを「ケムトレイル」という。

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太陽放射管理の問題点

毎年500万トンの二酸化硫黄を50年間散布した後、何らかの理由で散布が完全に停止された場合に、急激に温暖化が進行すると、モデルを用いて示した研究が存在する。エアロゾルの寿命は1~2年であり、停止後に操作前の気温へとすぐに戻ってしまうため、このような結果となるのである。

生物の順応能力の限界

気候変動が緩やかであれば、地球上の生物は気温変化に順応できると思われる。しかし、気候工学手法の停止で急激に温暖化が進行してしまうと、不意をつかれて対応できない種も出てきてしまう。また、種が順応しなければならないのは気温だけではない。降水量も劇的に変化するため、生活圏を移動しなければ全滅に追い込まれることになる。移動することのできない樹木や貝類などは、壊滅的な状態になるはずだ。

 

気候や降水量の変化に強い種であっても、キーストーン種(中枢種)の全滅による影響は無視できない。例えば、珊瑚がいなくなれば、珊瑚礁の中で生活している種や、それを捕食する種も全滅してしまう。

停止しなければ問題ないか

問題を回避する一番簡単な方法は、二酸化硫黄を際限なく空中に送り込み続けることだが、停止せざるを得ない状況に陥る可能性も考えられる。太陽放射管理は、特定の地域に恩恵を与える一方で、悪影響を被る地域も存在するため、利害の対立が生じるためだ。地球規模で太陽放射管理の展開を決定した場合、自国にとって有利に働くように強大な権力を振り回す国々も出てくると、容易に想像できる。また、火山噴火によって寒冷化が起こった場合にも、太陽光のコントロールを注視しなければならなくなるかもしれない。

技術的な問題

太陽放射管理はまだ始まったばかりであるため、実現のための技術はまだ存在さえしていない。エアロゾルを散布は危険であるため、マリンクラウド・ブライトニング(水分で雲を形成する手法)などの方法を検討してみることも必要だろう。あるいは、二酸化炭素隔離によって地中貯留するという手法でもよいかもしれない。

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