ハツカネズミのルーツ
長年不明であった日本産ハツカネズミの起源と渡来の時代背景が
明らかになった。
ハツカネズミはヒトの家屋のみに生息してきたため、人類が先史時代に
どのような経路で移動してきたかを調べる上で、貴重な情報を提供する。
以前、ミトコンドリアのDNA解析より、日本列島には南アジア亜種系統と
北ユーラシア亜種系統の2系統が存在することは明らかになっていたが、
ミトコンドリアDNAの進化速度が解明されていなかったため、移入時期を
正確に推定することは困難であった。また、この2つの系統がどのように
混合したかや、人為的な移入の状況についても把握できていなかった。
今回は、ユーラシア産ハツカネズミのDNAで、ミトコンドリアDNAを
解読したとのことであり、進化速度は100万年あたり11%としている。
DNA配列同士がどれくらい近い関係にあるかは、ネットワーク法という
手法により可視化し、集団の歴史的動態を解析した。
解析の結果、南アジア亜種系統は、約8000年前のインドネシア・大陸部と
約4000年前の中国南部、日本列島および南サハリンで生じたようだ。
また、北ユーラシア亜種系統は約2000年前の朝鮮半島と日本列島に
広がったことが判明した。このことから、日本列島には縄文後期と
弥生期の始まり頃にそれぞれ移入したことが示唆されたという。
また、中国南部および朝鮮半島には存在しないタイプのDNA配列が、
北日本のハツカネズミのゲノムには存在した。推定される断片長から、
中国南部系統よりも古い時代である縄文後期以前に、南アジアから
ハツカネズミが移入していたことが示唆されている。
さらに、核遺伝子の解析からは、欧米系亜種の断片も観察された。
研究グループによれば、このことは数十年程前にハツカネズミの移入が
あったことを示しており、現代人の活動が欧米系亜種系統の外来的移入を
招いたとしている。