サムの備忘録

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無知の知と大脳の仕組み

順天堂大学は、未経験の事象への確信度を自己評価する際に、前頭極と呼ばれる大脳皮質前頭葉領域が重要な役割を果たすことを発見した。

 

未経験の事象に対して「はじめての体験」であると自覚する能力は、自身の記憶を網羅的かつ内省的に探索し、その結果をもとに自身の「無知」を自覚する必要があるため、高度な認知情報処理を必要とする。

news.mynavi.jp先行研究で実施されたマカクサルでの実験では、前頭葉の一部の領域について下記のことがわかっていた。

  • 記憶そのものの処理には関与しない
  • 既知の出来事の記憶に対する確信度判断に貢献する
  • 未知の出来事に対する確信度判断には寄与しない

 

今回の研究では、サルの脳において未知の出来事に対する確信度判断を担う領域の同定を試み、大脳皮質の神経回路レベルで未知および既知の事象に対する「メタ認知」処理がどのように行われているかが明らかにされた。

まずは、マカクサルに対して、メタ認知に基づいた意思決定を行うことができるかを調査した。調査方法は、サルに図形を見せたあと、再認記憶の問題に回答させ、回答に自信があるかをレバーで示させるというものである。実験では、サルの行動に対して、下記のような報酬体系をとる。

  • 「自信をもって正解」した場合には報酬を与える
  • 「自信があったのに不正解」だった場合には何も与えない
  • 「自信がない」場合には常に報酬を与える

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その結果、「自信がある」とした場合の正解率が高いことが分かり、サルがメタ認知に基づいて確信度判断を行っていることが確かめられた。

 

さらに、サルの全脳の神経活動を計測すると、前頭葉の前頭極と呼ばれる領域が、未知の図形に対するメタ認知課題の成績と比例して、活動を強めることが明らかになった。未知の図形において相関があった一方、既知の図形においては成績と前頭極の活動の間に相関はなかった。

 

また、前頭極における一部の神経活動を抑制したところ、新規の図形を未知と分類する成績に変化はないものの、主観的な確信に基づいて報酬を最大化する行動がとれなくなった。これらの結果により、無知に対する自己意識を因果的に生み出す働きを、前頭極が担っているとわかった。