犬の社交性と遺伝子疾患
同じような環境で育てられた場合であっても、イヌはオオカミよりも
社交的であるとされている。これは、イヌとオオカミの遺伝的基盤に
違いが存在するからである。
今回の研究で、極端に社交的なイヌは「GTF2I」と「GTF2IRD1」
という2つの遺伝子に変異があることが明らかとなった。ヒトの場合、
これらの変異は「ウィリアムズ症候群」と関連づけられている。
ここで挙がったウィリアムズ症候群とは、7q11.23領域の複数の遺伝子の
欠失(ヘテロ接合)により発症する隣接遺伝子症候群のことである。
発症者は、妖精様顔貌・精神発達の遅れ・心血管病変・乳児期の
高カルシウム血症などを有する。また、社交的で多弁な性格であると
いわれている。
2010年にイヌとオオカミのゲノムを調査したときには、家畜化の過程で
「WBSCR17」という遺伝子に変異が生じたということが発見されたが、
これもウィリアムズ症候群の関連遺伝子だった。
このことは、イヌに行動症候群をもたせることで、
人間が愛玩動物を作り出してきたという可能性を示している。
このような変異は現在も続いているようで、WBSCR17の近くの
「GTF2I」と「GTF2IRD1」という遺伝子にも変異があることが、
遺伝子解析により明らかになった。