隕石から鉄器を生産した形跡
青銅器時代にも鉄製品は作られていたといわれるが、その材料として
隕石が使われていたという説を裏付けるデータが得られている。
gigazine.net鉄の生産は、ヒッタイト王国で始まったと考えられている。鉄を作る
ためには砂鉄や鉄鉱石が必要だが、これらは800度から1200度の高い熱
を加えることで精錬され、銑鉄や鋼が作られる。鉄の精錬を実現する
には高い技術とノウハウが必要であり、かつては国家最高機密レベルで
鉄の製錬技術は管理されていた。
この製錬技術が青銅器時代に存在しなかったことを理由に、隕石が原料
として用いられたという説が提唱されているが、実際に青銅器時代に
作られた鉄器を分析することで、その説が裏付けされた。
なお、ヨーロッパ以外の地域では、「空から来たもの」という意味の
ヒエログリフが鉄に与えられたり、孔子が「空に流れる一筋の線」と
「地面に転がる石」とを結びつけるような記述を行ったりするなど、
隕鉄の存在は古くから知られていた。そのため、古代エジプトや中国
では隕鉄から鉄製品を作っていたと考えられている。隕鉄は、純度が
高い場合が多いため、高い製錬技術を要さずとも比較的容易に鉄製品
を作ることが可能。
今回の分析結果では、古代の鉄器にはニッケルが多く含まれていること
が発見された。このことは、隕石の組成と同一であると同時に、精錬
された鉄の組成とは全く異なることを示唆し、古代の鉄器が隕石をもとに
作られたものであるという説を裏付けている。
また、ツタンカーメンの王墓で見つかった鉄器には、3つの異なる種類の
材料が使われていることも解き明かされた。当時、隕鉄は金よりも貴重な
ものであったと考えられているので、多くの労力と財力が投じられたこと
を示している。