がん微小転移の定量化
東京大学は、マウス個体の全身・全臓器に存在するがん微小転移を
1細胞レベルの解像度で解析することを可能にする技術を開発した。
がん転移の研究には「マウス がん転移モデル」が広く使用されている。
近年では臓器の深部でのがん細胞の増殖を時系列に沿って観察すること
が可能となってきているが、少数のがん細胞からなるがん微小転移を
研究グループは、これまでに高速3次元撮影が可能である
ライトシート顕微鏡に着目し、組織透明化という手法を開発してきた。
2014年には、生体色素の脱色に着目することによって、
マウスを個体ごと透明化する手法を開発し、
幼生マウスの全身イメージングに成功している。
今回の研究では、さらなる透明化手法の開発を目指し、屈折率の調整の
最適化を行った。その結果、脱脂・脱色試薬 であるCUBIC-Lと
屈折率均一化試薬であるCUBIC-Rを作製し、成獣マウスの
全身イメージングが可能なまでの高度な透明化に成功している。
様々な種類のマウスがん転移モデルにこの手法を応用することで、
遠隔転移や腹膜播種が個体レベルで観察可能となり、1細胞レベルでの
がん微小転移を高い解像度で定量化することが可能となるようだ。
この技術を応用してがん転移の時空間的解析を行うと、
がん細胞による初期の転移巣の形成機構を解明したり、
抗がん剤の治療効果の個体レベルでの検証が可能になる。